【郷土の本】佐用ハイキング34コース
佐用町は兵庫県の西端に位置する町で、平成17年(2005)に佐用郡の4町(三日月町・南光町・佐用町・上月町)が合併して誕生した町です。その佐用町の魅力を伝えて多くの人に歩きに来ていただけるようにと、「佐用ハイキングコース選定の会」を組織して、メンバーで平成25~27年(2013~2015)にかけて現地を歩き、34コースの日帰りハイキングコースをまとめたのが本書です。
佐用町内をバランスよく紹介
本書で紹介されるハイキングコースは、山、山城、県境トレール、街道などのジャンルごとにまとめられています。また、4つの町のいずれかに偏ることなく、自然散策と歴史散策のどちらの視点もあり、公共交通機関でもアクセス可能なコースも多く用意されているなど、幅広い層に対応したコースが用意されているため、ほとんどの人にとっては何かしら実際に歩いてみたくなるコースがあるでしょう。
例えば『上月城跡から後山へ』は、戦国時代に死闘が繰り返され、尼子勝久と山中鹿介の最後の戦いの地ともなった上月城跡の歴史散策に、付近の後山の自然散策を組み合わせたコースとなっています。
また、岡山県と接する佐用町らしいのが県境トレールで、『万能峠から杉坂峠へ』という中国自然歩道にもなっている県境の峠を結ぶコースもあります。
出雲街道と因幡街道歩きのコース
「出雲街道を歩こう」でも参考にさせていただいたのが出雲街道のコースで、同様に因幡街道のコースもあります。街道歩きのコースは6コースあり、佐用町内の出雲街道と因幡街道については、史跡の少ない国道や県道歩きとなる区間を除いてほとんどが取り上げられています。
この街道歩きのコースでは、旧街道らしい史跡を押さえつつも、安全に楽しめるハイキングコースにアレンジしています。例えば、『三日月駅から播磨徳久駅へ』のコースでは歩道がない国道を歩くしかない卯ノ山峠を迂回して、代わりに志文川沿いを紹介しており、このあたりは「出雲街道を歩こう」でも本書のコースに従ったポイントです。もちろん、旧街道沿いの主な史跡には立ち寄れるように配慮されています。
佐用町を歩こう
本書には「佐用ハイキングコース選定の会」のメンバーが仲間と一緒にハイキングをしている写真が多数あり、実際にグループでハイキングをしてコースが作られたことがよくわかります。おそらく参加したメンバーの感想を聞いて本としての取りまとめにフィードバックしていると思われ、徹底的に実際にハイキングをする立場での視点になっているのが本書の最大の特色です。また、「佐用ハイキングコース選定の会」のメンバーが歩いている様子が本書で紹介されているコースの楽しさをよく表しています。
一方で、あとがきには『これらのコース選定で苦慮したのは、想像以上の里山の荒廃である。そして二度にわたる台風による山荒れでコース作りに苦しんだことを付け加えたい。』『これからぜひ、この本を手に、多くのハイカーにシーズンを通して訪れてほしい。佐用町のファンを増やしたい。町民の皆さんが気持ち良く迎えてくださるだろう。』とあります。佐用町は台風により甚大な被害があったので特別という部分はありますが、これらの言葉が佐用町のみならず地方の思いをストレートに表していると思います。
佐用町は鉄道でも道路でも京阪神の大都市圏から2~3時間で、日帰りハイキングも可能な場所。ぜひ本書を片手に、本書のコース作りをした人たちの思いも心の隅に置きながら、佐用町を楽しく歩いてみてください。
なお、本書のハイキングコースの一部は佐用町公式の観光サイト「ぐるり佐用 観光ガイド」にも掲載されています。