鳩ヶ原の地蔵道標
大山道のうち、南からの横手道は岡山県から大山へ来る人々によく利用されており、岡山県でも多くの大山道道標が見られます。その中でも最も鳥取県境に最も近い蒜山の森の中にあるのが鳩ヶ原の地蔵道標です。
鳥取大学教育研究林の中にある道標地蔵
国道482号の鳥取岡山県境は内海乢。その内海乢の北東に広がるのが「蒜山の森」と呼ばれる鳥取大学の教育研究林です。ここでは天然林が保護されており、そこを通る大山道も昔のままの道が保たれています。一軒の人家もない場所ですが、道標が立っています。
「右 やま道」
「左 大山道」
天明8年(1788)
「地蔵信仰に育まれた日本最大の牛馬市」として日本遺産になっているだけに、大山道の道標を見ると、地蔵菩薩が彫られているか、地蔵に道標銘があるものが多く、その傾向は岡山県でも同じです。
鳥取大学教育研究林内の道の交差点にあり、現在も道標で表示されている通りの道の形状になっていることから、200年以上にわたって森の中に動くことなく立ち続けていたものと思われます。
鳥取大学教育研究林とその過去
周辺は鳥取大学の教育研究林として自然が保護されているため、昔の大山道とほとんど変わらないと思われる山道が長く続きます。教育研究林内では道にひどく草木が生い茂ることはなさそうで、道筋さえ知っていれば迷うことなく歩くことができます。
ただ、一般的な地図には載っていない道なので、ここに至るまでを含めて初見では正確に道筋を辿るのは難しいかもしれません。「出雲街道を歩こう」では「ヤマレコ」に山行記録を残していますので参考にしてください。また、「蒜山ガイドクラブ」が開催する「大山古道トレッキングツアー」もありますので、そういった機会を活用するのも良いでしょう。
鳥取大学教育研究林は今でこそ美しい天然林ですが、昔からずっと人の手が入っていない場所というわけではありません。その敷地を取り囲むように土塁が続いていますが、これは戦前にこの場所が陸軍の軍馬育成場だった名残です。さらに昭和10年(1935)から終戦(1945)までは蒜山は国内で最も広い陸軍演習場となり、中国大陸に見立てた広大な演習場で厳しい訓練が行われていたのも忘れてはいけない歴史です。
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