津山市押入地区の道標
津山から鳥取への因幡道は川崎地区の玉琳で出雲街道と分岐しており、その分岐点には「かつて存在した出雲街道の元禄道標」でご紹介した元禄の道標(現在は再建された新しい道標)がありました。ここから北東に向かう因幡道は津山盆地らしい低い丘陵を越えて押入地区に入ります。
押入地区西入口の道標
押入地区に入った因幡道は集落に入る前に中国自動車道に出会っていったん昔の道筋が途切れますが、中国自動車道の南側の交差点に道標が保存されています。
「右 おし入」
「向 つやま」
「左 いなば」
「美作の道標と出雲往来一里塚」によれば、この道標は立っていた場所に中国自動車道が通ることになったため、道標が失われることを危惧した近隣にお住まいの個人が、一時的に道標を保管して再設置したそうです。わずかな移動はあったでしょうが、津山方面から来た場合に道標の向きや記載内容が当時と同じ意味を持つように置かれており、この道標が大切に思って行動された方の思いが伝わってきます。
2つの因幡道分かれの元禄道標
押入地区の集落内、因幡道と県道345号との交差点にも道標があります。美作国に多く残っている元禄の道標で、同様のデザインとなっています。
「南 是より右因幡道」
「西 是より左北のかも道」
元禄2年(1691)
県道と旧街道の交差点ということで、現在の道路網とは合致していると言えますが、県道345号の道筋は近世にはなかったそうで、現在の位置よりもう少し西の蟹子川沿いから移設されてきたものと推定されます。
因幡道には豊沢を経由して黒尾峠を越えるルート(現在の国道53号に近い)と、加茂を経由して物見峠を越えるルート(現在の県道6号やJR因美線に近い)があり、その2つの因幡道の分岐を示す道標です。