【郷土の本】絵図で歩く津山城下町
「出雲街道を歩こう」「出雲街道を歩こうPlus」をご覧になっている皆様なら、江戸時代の絵図を見ながら町を歩いてみたいという思いを持っておられる方も多いでしょう。本書は絵図を付録に付け、それを見ながら町を歩くことを念頭に置いた津山城下町のガイド本で、著者は津山郷土博物館に長く勤務され、刊行時に津山郷土博物館長であった尾島治氏です。
6つのコースを紹介
本書は冒頭に「津山城下町の成り立ち」として津山城下町の歴史を簡単に説明した後、「内山下から津山城を歩く」「津山城下町・内町 出雲街道と職人町を歩く」「津山城下町・内町 吉井川沿いの南部を歩く」「衆楽園から椿高下・田町の武家屋敷を歩く」「津山城下町・外町(東) 城東六町の出雲街道と上之町を歩く」「津山城下町・外町(西) 翁橋から西を筋違橋まで歩く」という6つに分けたコースの紹介にほぼすべてのページが割かれています。
この6つのコースをすべて辿ったら津山城下町エリアのほとんどの道を歩いたことになるというほどの詳しさで、実際に歩くコースの順序に従って絵図に描かれた注目すべきポイントを網羅しているほか、絵図にはない町のエピソードも多数紹介されています。まさに津山城下町の全てを知ることができる本と言えるでしょう。
津山城と出雲街道以外の場所
津山における歴史の名所と言えば、津山城跡と城東・城西地区の出雲街道沿いがまず思い当たる場所で、おそらく当サイトをご覧くださっている皆様も津山に来られた際にはこれらの場所には訪れることでしょう。しかし、津山は出雲街道の宿場町というよりは津山藩の城下町であり、その市街は東西に長い形とは言え面的に広がっていて、再開発の一部地区を除いて城下町の町割りはほぼそのままに残っています。
中でも「衆楽園から椿高下・田町の武家屋敷を歩く」は城下町の北部を歩くコースになっており、この辺りは観光地化は進んでおらず近年整備された案内看板等も少ないので、本書を読んで絵図を見ればこそ、絵図の通りに城下町の町割りがよく残っていることや、城下町としての施設等の痕跡があることを確認できるコースとなっています。
町歩きの会も開催された
本書の発売後、平成28年(2016)から29年(2017)にかけては「絵図で津山城下町を歩く会」も開催されました。著者の尾島氏が全行程のガイドとして同行して6つのコースを本書の通りに歩くというもので、津山市民を中心に多くの参加者がありました。
私も第4回と第6回に参加させていただいたのですが、確かに絵図を見ながら歩けば、津山城下町の町割りが今もあまり変わっていないことがよく実感でき、尾島氏のガイドも含めてとても楽しく勉強になる会でした。なお、「出雲街道を歩こう」に「第6回絵図で津山城下町を歩く会」のページを作成しております。個人で歩くと尾島氏のガイドはありませんが、その尾島氏が考えたコースを本書と付録の絵図を見ながら順に歩いていけば、その要点は十分にわかります。誰にでも読みやすいのに専門家視点もあって詳しい本書、ぜひ入手して実際に津山の町歩きをお楽しみいただきたいです。
『絵図で歩く津山城下町』
著者 尾島治
発行 吉備人出版
発行年 平成28年(2016)