【郷土の本】米子の道しるべ散歩

鉄道では山陰本線と伯備線と境線、高速道路では米子自動車道と山陰自動車道が集まり、米子鬼太郎空港もある米子市は山陰随一の交通拠点です。米子市が県庁所在地である鳥取市や松江市と遜色ないほど繁栄している要因はやはり交通面にあると言え、それは昔も今も変わることがありません。その証拠に米子市内には多くの道標が残されていて、各方面への古道の道筋を示しています。そんな米子の道標を紹介しているのが本書です。

旧米子市の道標の紹介

本書ではまず平成の合併前の米子市域にある道標を紹介しています。島根県境の県境碑に始まり、車尾や水浜など出雲街道の道標、尾高や日下などの大山道の道標、夜見の境往来の道標など、文化財に指定されていないものも含め、旧米子市内に現在も残されている道標を網羅しています。

車尾の道標
車尾の道標
日下の道標

道標の写真だけではなく、内容を模写したイラストが添えられており、現地で確認しづらいことも多い文字を見て、古道のネットワークに思いを馳せることができます。例えば、米子市南部から伯耆町北部にかけての出雲街道は複数の道筋があったとされていますが、当サイトでご紹介している出雲街道の道筋から少し東に外れた河岡地区の妙本寺にある題目塔に「前 上加た道」の道案内があることが紹介されており、そのことを裏付けています。

「上加た」の文字が見える河岡の題目塔
「上加た」の文字が見える河岡の題目塔

周辺地域から米子を指す道標も

本書の大きな特長は、教育委員会発行の本でありながら紹介内容を米子市内に限定することなく、周辺市町村にある道標のうち、米子という文字が読み取れる道標が掲載されている点です。出雲街道の二部宮の鼻の道標(伯耆町)、新出雲街道の天万の道標(南部町)、大山道の天王の道標(岡山県真庭市)や地蔵峠の道標(倉吉市)、山陰道の赤碕の道標(琴浦町)などが紹介されています。単に米子市内の道標を紹介するだけでなく、このように周辺市町村の道標の紹介により、米子が多くの古道が集まる交通の要衝であったことがよく強く実感できます。

天万の道標
天万の道標
地蔵峠の道標

道しるべ散歩に出かけよう

本書は書籍というよりは、A5サイズでわずか26ページという冊子です。しかしながら、「道しるべ散歩」というタイトルの通り、実際に持ち歩いて道標巡りをするには、カバンどころかポケットにも入るサイズがたいへん便利です。きっちりと道標の位置図は付けられていますし、本文も現地に行く前の予習や現地での確認に欲しい情報が過不足なく記載されているのも好ましいところです。

序文の最後、『この冊子を手にして、道しるべを尋ね、むかしの道を歩いて見ませんか。きっと新しい発見があると思いますよ。』という言葉通り、米子とその周辺地域の歴史の道を実際に歩いて道標を見ることに最適化された冊子だと言えます。

『米子の道しるべ散歩』

発行 米子市教育委員会

発行年 平成10年(1998)

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