【平成の市町村合併】米子市・大山町
平成中期に市町村合併が強力に推進されたことにより、特に地方部では町村の数が大幅に減少し、出雲街道の沿線の市町村も合併により数がかなり減りました。その市町村合併から約20年が経過し、合併によって消滅した市町村名も地名として残ってはいますが、若い世代や地域外の人達の知名度は少しずつ落ちてきているのが現実でしょう。そこで、今一度、平成の市町村合併と合併前の市町村名を振り返ってみます。前回の日野町・伯耆町の北は米子市です。出雲街道は通りませんが、大山寺がある大山町もあわせてご紹介します。
米子市の合併
米子市←米子市、西伯郡淀江町
平成17年（2005）3月31日に新設合併
2020年国勢調査における米子市の人口
147,317人（対2000年：0.4%減）
2000年国勢調査における米子市に該当する地域の人口
合計：147,837人
米子市：138,756人 淀江町：9,081人
鳥取県における平成の市町村合併は2～3の市町村のみが合併したケースが多く、県西部の中心都市である米子市も例外ではありません。人口は20年間でほぼ横ばいと、鳥取市や松江市よりも減少率が低くなっていますが、合併後でも過疎化が深刻な山間部を含んでいないという一面もあります。
出雲街道は合併前の米子市の南東から中心市街地を経て北西へ貫いています。
旧米子市は安土桃山時代から城下町として発展しましたが、近代以降は鳥取県および島根県の中央に位置していることもあって産業都市となり、山陰随一の商都となりました。3店舗もあったデパート、アーケードが1km近く連続する商店街は人口15万人に満たない地方都市としては破格のものでした。現在ではデパートは2店舗に減少、シャッター通りと化した商店街のアーケードはほとんど撤去されるなど、明らかに中心市街地が衰退してきていますが、同等の規模の地方都市で2つのデパートが残るのは全国でも米子市しかなく、商店街にもかつての繁栄の面影はよく感じ取れます。
商業都市として繁栄する一方、これまで史跡の保存活用の取り組みについてはあまり重視されていなかったという感は否めませんが、近年では米子城跡や市街地の町屋や小路、小橋などが観光客の人気を集めつつあります。郊外の名所としては皆生温泉が全国的に有名なほか、福市遺跡や尾高城跡などの史跡もあります。
旧淀江町は米子市の東にあり、日本海の港もあり、山陰道の淀江宿も置かれていた町です。大山山麓でも特に湧水の豊富な町で、天の真名井や本宮の泉などが有名です。山陰自動車道付近には伯耆古代の丘公園や上淀廃寺跡もあります。
大山山麓の水の良さは特筆すべきものがあり、米子市水道局には浄水場がなく、水道水は大山の地下水を汲み上げて軽く消毒しただけものであるため、日本一おいしい水道水とも言われています。前回、江府町を採水地としているサントリー天然水をご紹介しましたが、全国で市販されているミネラルウォーターにも米子市や伯耆町を採水地としているものが多種あります。
大山町の合併
大山町←西伯郡大山町、名和町、中山町
平成17年（2005）3月28日に新設合併
2020年国勢調査における大山町の人口
15,370人（対2000年：20.4%減）
2000年国勢調査における大山町に該当する地域の人口
合計：19,561人
大山町：6,730人 名和町：7,598人 中山町：5,233人
西伯郡東部の3つの町が合併しました。地域のシンボルである大山を町名としていますが、合併後の役場は3つの町の真ん中に位置する旧名和町役場となっています。米子市や発展著しい日吉津村にも近く、国道9号や山陰本線沿いの生活利便性は悪くないように見えますが、20年間で20%以上の人口減少となっています。
旧大山町は町名の通り大山があり、大山寺エリアや桝水高原エリアなど、大山周辺の観光ポイントの大半が所在しています。弥生時代の大規模な遺跡である妻木晩田遺跡や、大山山麓の暮らしを今に伝える重要伝統的建造物群指定地区の所子地区があるのも旧大山町です。
旧名和町は後醍醐天皇を支え、船上山の戦いの立役者となった名和長年ゆかりの地です。建武中興十五社の一つに数えられる名和神社を中心に、後醍醐天皇御着船所など後醍醐天皇と名和長年の伝説の地が多数あります。海岸沿いの御来屋地区は山陰道の御来屋宿があった場所で、名和町役場（現・大山町役場）があるのも御来屋地区です。山陰本線の快速列車の一部が停車していたのも名和駅ではなく御来屋駅でした。
旧中山町は（新）大山町の東の端に位置します。旧名和町と同様に、山陰道の下市宿があった下市地区や上市地区が栄えており、山陰本線の快速列車の一部が停車していたのも中山口駅ではなく下市駅でした。内陸部には大山道のうち赤碕からの川床道が通っており、特に羽田井地区には元禄時代の道標や多数の地蔵、一丁松が残されています。
