【平成の市町村合併】日野町・伯耆町

平成中期に市町村合併が強力に推進されたことにより、特に地方部では町村の数が大幅に減少し、出雲街道の沿線の市町村も合併により数がかなり減りました。その市町村合併から約20年が経過し、合併によって消滅した市町村名も地名として残ってはいますが、若い世代や地域外の人達の知名度は少しずつ落ちてきているのが現実でしょう。そこで、今一度、平成の市町村合併と合併前の市町村名を振り返ってみます。前回の真庭市・新庄村の西は鳥取県に入り、日野郡日野町です。日野町は合併をしていないので、その北の伯耆町と日野川流域の町村をまとめてご紹介します。

合併をしなかった日野町

日野町は合併をせず、昭和の合併からの町域が残っています。

2020年国勢調査における日野町の人口

 2,907人(対2000年:35.6%減)

2000年国勢調査における日野町の人口

 4,516人

日野町の人口は長い出雲街道の沿線の市町村の中でもワーストの減少率となっています。今回の減少率算出の基準とした20年間で高速道路の開通や工業団地の造成といったプラス要因がなかったことや、日野町で震度6強を記録して大きな被害があった平成12年(2000)の鳥取県西部地震が影響していると言えるでしょう。

町の中心地区は出雲街道の宿場町だった根雨で、根雨駅には特急「やくも」の約半数が停車、高校、総合病院、銀行、スーパーといった施設があるほか、鳥取県の西部総合事務所日野振興センターも置かれ、日野郡全体の中心地と言える状況になっていますが、町の機能が根雨にのみ集中しているだけではなく、城下町だった黒坂にも黒坂警察署があるなど、一定の集積があります。

黒坂も中心性を持つ城下町

町内の見どころとしては金持神社や根雨宿の街並みなどがあり、体験型アクティビティも徐々に人気を高めていますが、これらの人気が高まってきたのは最近のことであり、平成前期までの時代に集客力があった観光名所は乏しいとも言えます。

日野町歴史民俗資料館(旧根雨公会堂)

伯耆町の合併

伯耆町←西伯郡岸本町、日野郡溝口町

平成17年(2005)1月1日に新設合併

2020年国勢調査における伯耆町の人口

 10,696人(対2000年:15.5%の減少)

2000年国勢調査における伯耆町に該当する地域の人口

 合計:12,663人

 岸本町:7,271人 溝口町:5,392人

伯耆町は西伯郡岸本町と日野郡溝口町がそれぞれ西伯郡や日野郡の他の町ではなく、郡の違う2つの町が合併しました。しかし、岸本町と溝口町は国道181号や伯備線で結ばれた日野川沿いの町同士で、それぞれの町の中心部の間も近く、自然な形に見える合併です。山間部では人口減少が続いていますが、旧岸本町域には小規模ながらも新興住宅地があり、日野郡の3町に比べれば人口減少は緩やかです。

出雲街道は二部宿・溝口宿の2つの宿場があった旧溝口町から旧岸本町へ、現在の伯耆町域の南端近くから北端近くへ貫く形となっています。

西伯郡岸本町と日野郡溝口町の境だった郡界橋
西伯郡岸本町と日野郡溝口町の境だった郡界橋

旧溝口町は日本最古の鬼伝説があり、「鬼の町」としてのまちづくりが推進されていました。町を見下ろす高台に「おにっ子ランド」という遊園地が造られ、巨大な鬼の像は今も町のシンボルとなっているほか、町内各所には鬼の像が配置され、そこらじゅうで鬼の姿が見られます。町域は出雲街道の溝口宿を中心に南に広がっており、東部は大山山麓の高原地帯、南西部はかつての鉄山地帯となっています。また、大規模なフラワーパークの「とっとり花回廊」は所在地こそ隣の南部町になりますが、溝口の町が最も近く、溝口経由でアクセスするのが一般的です。

溝口のシンボルの鬼の像
溝口のシンボルの鬼の像

旧岸本町は町名となっているの岸本地区の隣の吉長地区に駅や役場などが集まっていますが、総合病院や大きな商業施設、高校はなく、町の機能はあまり中心部に集中していません。町域は日野川右岸の大山山麓に広がり、名所としては植田正治写真美術館などがあります。日野川の左岸を通る国道181号沿いの地区では古代の史跡があり、福樹寺には国の重要文化財に指定されている石製鴟尾もあります。

福樹寺の石製鴟尾
福樹寺の石製鴟尾

日野郡の日南町と江府町

鳥取県日野郡はどの町も日野川流域で、先述のように鳥取県西部総合事務所にも日野振興センターがありますが、隣接する岡山県の真庭市や新見市、広島県の庄原市のような広域の合併どころか、日野郡の町同士の合併も行われませんでした。出雲街道が通らない日南町と江府町についても簡単にご紹介します。

2020年国勢調査における日南町の人口

 4,196人(対2000年:37.3%減)

2000年国勢調査における日南町の人口

 6,696人

2020年国勢調査における江府町の人口

 2,672人(対2000年:31.9%減)

2000年国勢調査における江府町の人口

 3,921人

日野町も含め、旧日野郡の3町はいずれも20年間で3割以上の人口減となっています。これは出雲街道や大山道の沿線全体でも最も厳しい数字です。

日南町は岡山県、広島県、島根県の3県に接した広い町です。特急「やくも」の停車駅を根雨と分け合う生山駅周辺から新しい役場や公共施設が集まる霞地区にかけてが中心地区ですが、3県と接する最奥の町という立地とは裏腹に、日野川の谷を離れても狭い平地が多くあります。このような地形はたたら製鉄と関連しており、製鉄に由来した地名も多数見られます。

山間部ながら小平地が多い日南町
山間部ながら小平地が多い日南町

江府町は駅や城跡もある日野川沿いの江尾地区が中心となり、夏祭りの「江尾十七夜」も知られていますが、日野川の谷よりはむしろ「奥大山」と呼ばれる大山山麓のイメージが強い町で、御机の茅葺小屋、貝田の棚田、鍵掛峠という大山の南壁を望む景色が有名です。ミネラルウォーターのトップブランドであるサントリー天然水のうち、近畿・中国・四国地方での販売分は「奥大山」ブランドで、江府町を採水地としていることに代表されるように、豊かな自然環境に着目した企業の進出も見られます。

御机の茅葺小屋
御机の茅葺小屋

先述のように日野郡の町はどこも人口の減少が進んでいますが、上の2枚の写真のように、国道や伯備線が通る日野川の谷からかなり離れた場所でも平地があって水田が開発され、まとまった人の暮らしがあったというのが日野郡の特徴です。人口減少率が高いという数字からは、かつては多くの人口を抱えることができるだけの土地と産業があったと読み取ることもでき、日野郡に関してはその数字の読み方も決して間違いではないと思います。

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